問200 糖尿病性腎症の病理学的変化を経時的に説明せよ。
解答
最初はびまん性に壁の肥厚病変を示す(係蹄壁肥厚とメサンギウム基質の増加)
進行すると、結節性病変(節のように渦を巻いて見える)、または滲出性病変(ペンキで塗りつぶしたように見える)になる。その結果、糸球体硬化性病変に至る。
※普通、メサンギウムは基質が増えると細胞も増える。糖尿病性腎症のみ例外で、基質のみ増える。それらが集まって結節を作るのである。
問201 Kimmelstiel-wilson(キンメルスティーン・ウィルソン)病変とは?
解答
結節性病変のこと。沈着した糖蛋白に脂質が加わることに由来する。
問202 糖尿病発症から微量アルブミン尿が出現するまで何年かかるか?
解答
問203 糖尿病性腎症の病期を簡単に述べよ。
解答
第一期:無症状で、ろ過過剰(つまり、初期は糸球体濾過量が増える)
第二期:微量アルブミン尿出現
第三期:持続性蛋白尿
第四期:腎不全期
第五期:透析療法期
問204 糖尿病性腎症が不可逆性病変となるのはどの病期から?
解答
第三期から。
※とはいえ、やはり糖尿病自体が完治する疾患ではないので、第一期でも緩やかに進行はする。
問205 第三期でみられる臨床所見を二つ挙げよ。
解答
問206 糖尿病性腎症の初期では腎萎縮がみられるか?
解答
問207 腎不全患者に経口血糖降下薬を使用するうえでの注意点は?
解答
血糖降下薬は腎臓で代謝されるので、使用量を適宜減らす必要がある。インスリンに切りえた方がコントロールしやすい場合も少なくない。とくに、すい臓から内因性インスリンを絞り出す作用のSU剤などは要注意である。
問208 なぜACE阻害薬が糖尿病性腎症に使われているのか。
解答
ⅰ)もともと糖尿病性腎症では、輸入細動脈が輸出細動脈より拡張している。
ⅱ)とくにアンジオテンシンⅡは、輸出細動脈を収縮させる働きがあり、糸球体内圧をますます高めてしまう。いわば、ⅰ)で風呂の蛇口を大きくして、ⅱ)で風呂桶の栓まで閉めてしまうようなもの。そのせいで糸球体の細胞が高圧にさらされて傷んでしまう。
ⅲ)そこで、輸出細動脈を広げる作用のACE阻害薬を投与して(栓をぬいて)、糸球体内圧を下げてやるのである。
問209 糖尿病性腎症なのにACE阻害薬を使えないのはどんなときか。三つ挙げよ。
解答
◇妊婦(ACE阻害薬による催奇形性のため)
◇腎機能があまりに悪すぎるとき。糸球体内圧が下がりすぎ、原尿を尿細管側に濾し出せなくなることで、腎不全が悪化する。具体的には血清クレアチニン値2.0mg/dlを超えた場合。
◇両側腎動脈狭窄の症例
問210 糖尿病性腎症で肉眼的血尿は見られるか?
解答
たまに尿潜血はあるが、肉眼的血尿は見られない。むしろ尿蛋白が主体。
問211 なぜ糖尿病性腎症では、カリウムが蓄積した高血圧症になりやすいか。
解答
ナトリウムと水貯留で血管内容量が増えて血圧が上がる。その結果、低アルドステロン症となり、カリウム排泄量が減り、高カリウム傾向となる。
問212 ループス腎炎のwire loop lesionとは?
解答
内皮細胞下に免疫複合体が沈着したために、本来は薄く見える筈の毛細血管壁が太く塗りつぶされて針金のようになった所見。
問213 ループス腎炎の分類法の特徴は?
解答
SLEは免疫複合体の沈着部位によって、異なる病理所見と病状を呈するので、Ⅰ型からⅥ型まで存在する。腎生検が確定診断とはならない。
問214 ループス腎炎でもっとも活動性が高いのは何型?
解答
問215 Ⅳ型ループス腎炎の特徴を三つ挙げよ。
解答
●wire loop lesion
●ヘマトキシリン体(ヘマトキシリンによく染まる)
●半月体形成
問216 Ⅴ型ループス腎炎の特徴は?
解答
問217 ループス腎炎以外で腎障害をおこす膠原病を四つ挙げよ。
解答
◇全身性強皮症
◇結節性多発動脈炎
◇Wegener症候群
◇シェーグレン症候群
問218 全身性強皮症による腎障害は、さほど強くならないのはなぜ?
解答
狭窄するのは弓状動脈から小葉間動脈までで、輸入細動脈は無事だから。
問219 全身性強皮症による腎障害で、急激な腎機能低下を呈するものを何と呼ぶか?
解答
問220 強皮症腎クリーゼが起きる機序は?
解答
寒冷刺激で輸入細動脈が攣縮し、腎臓の虚血が急激に進行することで、レニンが大量に分泌されて悪性高血圧を呈してしまう。ACE阻害薬で降圧する必要がある。
問221 結節性多発動脈炎(PN)を、障害の主座で二つに大別せよ。
解答
肉眼的PN→中小動脈× ☞腎臓全体の虚血(浅く広くダメになる)
顕微鏡的PN→輸入細動脈× ☞糸球体がしらみつぶしにダメになる(深く広くダメになる)。
※肉眼的PNは、血圧高値、疼痛、血尿などを呈し、比較的軽症。
問222 シェーグレン症候群における腎障害といえば?
解答
問223 血尿のみの紫斑病性腎炎では、その予後は?
解答
問224 関節リウマチから続発しやすい腎障害といえば?
解答
問225 アミロイド腎の染色法について二つ挙げよ。
解答
●コンゴ・レッドで赤紫色になる。
●ダイロン染色法で赤褐色になる。
問226 アミロイド腎の合併症を三つ挙げよ。
解答
問227 骨髄腫性腎症の障害の中心は?
解答
Bence Jones蛋白による尿細管障害
※ただし、ネフローゼ症候群もおこす。
問228 Bence-Jones蛋白に障害される尿細管は近位と遠位のどちらか?
解答
問229 骨髄腫性腎症によって発症するものは?
解答
問230 続発性Fanconi症候群で認められる所見を四つ挙げよ。
解答
●糖尿
●汎アミノ酸尿
●低リン血漿
●Ⅱ型RTA
問231 骨髄腫性腎症での特徴的な血液検査の異常を二つ挙げ、かつその理由も述べよ。
解答
◇高カルシウム血症:骨髄腫によって骨が破壊されるため。
◇高尿酸血症:腫瘍細胞が大量にできあがり、大量に崩壊するので、大量の核酸が血中に逸脱することに由来する。
問232 高カルシウム血症、高尿酸血症によって何が引き起こされるか。
解答
高カルシウム血症で尿崩症を、高尿酸血症で痛風腎をおこし、濃縮力障害を呈した結果、多尿となる(脱水に注意)。
問233 痛風発作をおこす尿酸値は?
解答
7.0mg/dl以上
問234 gouty kidneyとは?
解答
痛風腎のこと。
問235 高尿酸血症と痛風の治療のちがいは?
解答
高尿酸血症ではベンズブロマロン(尿酸排泄促進薬)が利用されるが、痛風では腎への尿酸が増加するので利用しない。
※高尿酸血症と痛風の関係は、木の積雪をイメージするとわかりやすい。雪を尿酸、木に積もった雪が地面に落ちるのを痛風発作だとすると、木に積もった雪を一気に溶かして減らす作戦は悪手であろう(一気に落雪を招く)。じりじりと緩徐に暖光に当てて、緩徐に雪が減っていくのを待った方が、落雪させずに木の雪を減らすことができる。ゆえに、高尿酸血症を一気に是正させると、尿酸が結晶化してかえって痛風を招くため、緩やかに尿酸値を下げていくべきである。
問236 なぜ痛風結節は髄質の間質に好発するか?
解答
ⅰ)ネフロンの末梢に行くほど、水分が吸収されて尿酸濃度が上がるため。
ⅱ)ネフロンの末梢に行くほど、H+が分泌されてpHが下がり、尿酸結晶が析出しやすくなるため。
問237 痛風腎の主たる病態は?
解答
問238 痛風腎の主症状は?
解答
問239 痛風腎の治療は?
解答
・十分な水分摂取
・重曹・クエン酸塩での尿のアルカリ化
・アロプリノールやフェブキソスタット(尿酸産生抑制薬)
問240 腎細胞がんの別名は?
解答
問241 腎細胞癌の発生母地と主な型は?
解答
問242 腎細胞癌のtriasは?
解答
問243 腎細胞癌の転移先を、頻度の高い順に三つ挙げよ。
解答
問244 腎生検時の体位は?
解答
問245 腎生検は腎臓のどの部位を狙うか?
解答
問246 なぜ陰嚢部静脈瘤が、腎細胞癌の初発症状として多いのか?
解答
問247 腎細胞癌と腎盂腫瘍の検査の違いは?
解答
問248 腎細胞癌への治療法を三つ挙げよ。
解答
◇手術
◇免疫療法(サイトカイン療法):IFN-α、IL-2
◇分子標的薬
問249 腎細胞癌に用いられる分子標的薬を六つ挙げよ。
解答
ソラフェニブ
スニチニブ
エベロリムス
テムシロリムス
アキシチニブ
パゾパニブ
※この手の問題は、語呂合わせで対応しよう。
問250 腎障害を起こす感染症を七つ挙げよ。
解答
HBV→膜性腎症
HCV→膜性増殖性糸球体腎炎
HIV→巣状糸球体腎炎
腸管出血性大腸菌O157→溶血性尿毒症症候群
溶連菌→急性糸球体腎炎
レピトスピラ→weil病(ワイル病)
ハンタウイルス→腎症候性出血熱
問251 weil病のtriasは?
解答
問252 緊急透析を要する場合のバスキュラーアクセスはどこか?
解答
バスキュラーアクセスとは、どの血管から透析療法を行うか(血を抜いてきれいにして戻すか)、を指す。
緊急の場合は、大腿静脈や総頸静脈などの中心静脈に専用カテーテルを挿入する。
問253 ダブルルーメンカテーテルとは?
解答
脱血用の孔と、送血用の孔が一本のカテーテルに収まったもの。二本の銃身を持つ散弾銃のような構造をしている。