【内科医必修!】実践的な救命処置を学ぼう! JMECCについて

この記事は、2023年11月14日に更新しました。

もくじ



Ⅰ. JMECCってなに?


皆さんはJMECC(日本内科学会認定内科救急)をご存知でしょうか?

JMECCとは、内科学会が主催している救急蘇生講習会です。

緊急性の高い内科系疾患に遭遇した場合の迅速な対応を目指した講習会で、一日の受講とペーパーテストで全課程を修了します。

講習のおおまかなタイムスケジュールは、内科学会のJMECCホームページで公表されているとおり、

●午前:心肺蘇生法 (ICLS)

●午後:内科疾患による急変時対応方法

になります。

JMECCの受講で自動的にICLSのプロバイダーも取得できます。

さきほど挙げた”内科疾患による急変”といえば、皆さんはどのような状況を思い浮かべるでしょうか?
きっと皆さんご自身が急変時に遭遇されたご経験があることでしょう。

●ショックバイタルでの搬送例
●病棟での卒倒
●院内スタッフコール
etc・・・。

一つ一つの現場で状況が全く異なりますから、絶対的な指針を確立・提示することは至難かと思われますが、中には悔いの残るケースもあったのではないでしょうか?

「心肺停止に陥る前段階に、もっと早く処置を実施できていれば」

・・・と。

内科系の急変時対応、すなわちJMECCとは、このような状況を対象にしたコースなのです。

一日で修了するプログラムのため、スケジュールは非常にタイトです。
ですが、適切な急変時対応のイロハを学ぶ場ですから、内科医であれば誰もが(専門領域に関わらず)習得しておくべきスキルといえるでしょう。

JMECCは新専門医制度の一環で始まった事業であり、2019年現在、日本内科学会では認定内科医試験や総合内科専門医試験を受験する際の救急講習会として、JMECCを推奨しています。

新制度の専攻医が定まり、なおかつ資格試験の出題範囲にJMECCの履修内容が含まれていることなどから、最近はJMECCの受講生が徐々に増えてきている印象です。

Ⅱ. JMECCと他の救急コースの違い

JMECCは、救急医学会のICLS、またはAHAが母体のBLS、ACLSなどと何が違うのでしょうか?

ICLSにせよ、BLSにせよ、これらの講習会は心肺停止に陥ってからの適切な対応を学ぶものですが、JMECCは心肺停止に陥る前段階の切迫した内科的急変事態にどう対処するのか、というのがポイントになります。

患者の容態が急変した時点から適切な初期対応をおこない、心肺停止状態に陥ることを未然に防ぐことを求められるのは言うまでもありません。

みなさんも、

「”予期せぬ急変”を目の当たりにした時、あわててその場で思い付いた順に指示を出してしまった」

・・・というご経験はありませんか?

急変時こそ落ち着いて、系統立てたプロセスで病態を把握することを推奨しているのがJMECCなのです。

実践的に急変時対応を学べること、そして修了日程が一日で修了することを思えば、専門医の新制度とは関係なく、もっと多くの内科医たちが積極的に受講しても良いのではないか、と思います。

Ⅲ. JMECCは早めに受講しておいた方が吉!?

新専門医制度において、内科学会は資格試験の必修項目として救急講習会の受講を義務づけています。

従来のACLSもエビデンスが豊富で有用なコースですが、JMECCは内科学会が主催・推奨していることから、今後は新専門医制度の専攻医が受講生のメインになっていくことでしょう。

ここで一つの懸念があります。

筆者個人の印象ですが、JMECCの知名度がまだ高くないという点です。
ICLSやACLSは知っていても「ジェイメック?なにそれ?」という反応が返ってくることが多いのです・・・。

実際、専攻医が専門医試験に臨む時期になって初めて”JMECCの受講”という項目を見つけ、駆け込みで受講に訪れる・・・という場面が増えてきているように感じます。

ところが、インストラクターの数には限りがあるうえ、地方によってその人数にもバラつきがあります。JMECCの開催権限を有したディレクターが、他の救急コースのディレクターも兼任していることは稀ではないため、JMECCばかりを開くわけにはいきません。

また、新たなディレクターやインストラクターを確保するにも、新型コロナ騒動で長らく指導者養成の講習会が中止されたため、なかなか簡単にはいきません。

つまり、総合内科専門医試験を目前に控えた頃になって、都合よくJMECCを受講できるとは限らないのです。

コロナ騒動も重なり、学会側で「JMECCの受講は試験後でもOK」としたのは柔軟性に富んだ英断だと思いますが、本来はJMECCの内容も把握したうえで試験と臨床にのぞむべきですので、やはり可能なかぎり早めに受講するべきでしょう。

(個人的な意見を申せば、コロナ騒ぎの渦中だからこそ、JMECCで内科救急の質の向上を求めるべき、と思うのですが。)

記録も兼ねて、コロナ騒動中のJMECCについての方針変更の過程を時系列順に残しておきます。

<2021年4月9日-11日に開催された日本内科学会総会>
医療従事者へのワクチン接種が夏頃には達成される見通しであることから、2021年9月頃の再開を目指して準備中との一報。
しかし・・・・・・。

<同年8月23日付のHP発表>
当面のJMECCの開催は延期と発表。
インストラクター養成コースまで延期になり、専門医試験受験生に対する救済措置期間の延長も議論の対象に。その後、学会HPを通じて”専攻医1期生~3期生を対象に、試験後から1年の間に受講すればOK”という措置期間が設けられました。多くの専攻医たちは安堵のため息をもらしたことでしょう。柔軟な学会の対応に感謝、ですね。
なお、この期間でも地方ではなんとかJMECCを開催しているところもありました。

<同年10月28日付のHP発表>
「JMECC修了見込」を得た専攻医は、JMECC未受講でも専門医試験を受験することができるようになりました。
ペーパーテストに合格すれば、専門医の認定を得ることが可能という措置です。
ただし、専門医資格の初回更新までにJMECCを受講しておかないと、資格は喪失するという条件付です。実質は5年6か月の移行措置というわけですね。
この措置の対象者は、専攻医1期生(2018年度研修開始)~専攻医4期生(2021年度研修開始)になりますが、今後も変更が加えられる可能性はあると思います。
なぜならば、どの県でも、2020年に受講予定だった専攻医がJMECCを受講できずに溜まっているからです。
この「溜まった未受講性」問題が解決するために5年もの措置を準備したことは正に英断ですが、パンデミックや災害はもはや常に起こって当たり前、という時代です。今後も学会側から変更が発表されてもなんら不思議ではないのです。

<2023年1月12日付のHP発表>
おおむねの内容は2022年10月28日のものと変わりませんが、さりげなく、「~専攻医4期生(2021年度研修開始)」の部分が、「~専攻医5期生(2022年度研修開始)」に改訂されています。
やはり、措置対象者が拡大されたようですね。

先に述べたように、インストラクター側にも頻繁に開催できない事情がありますから、もし地元でJMECCを開催する情報を耳にされた際には、ぜひ積極的に参加したほうがよいでしょうね。
今後も、JMECC開催のスケジュールについては当サイトでも慎重にチェックしていきたいと思います。

新専門医制度が始まった以上、今後のJMECCは黎明期を抜け出し、計画的な開催と受講が望まれる段階に突入したのだと思います。

専門医試験・・・、とくに内科学会の総合内科専門医試験を考えている方は、予約で混み合う前に早めに受講しておくことをお勧めします(臨床でも活きるわけですし)。

※なお、2023年現時点でJMECCの更新規定はありません。

※私見を述べますが、JMECCのインストラクターは、日本救急医学会のICLSインストラクターも同時に自動取得しているわけですが、上層部の取り決めでICLSインストラクターの資格更新料制度が始まってしまいました。

ICLSの更新料を支払わないと、JMECCのインストラクターとして活動できないというのです。指導者が不足するなか、これはちょっとひどいです。

Ⅳ. RSS対応コースについて

病院の診療報酬に関する内容ですが、令和4年度から「急性期充実体制加算」が新設されたことをご存知でしょうか。

【急性期充実体制加算】(急性期一般1、特定一般の加算)
▼7日以内:460点(1日につき)
▼8-11日:250点(同)
▼12-14日:180点(同)
と、なかなかの高点数です。

そのぶん、
●救急受け入れ 2000件以上
●全身麻酔手術 2000件以上
といった、厳しい施設基準が設けられています。

なので、このⅣの項目は、最低でも上記の2条件を満たす大病院以外で働いている方には関係がありません

この救急充実体制加算に、JMECCの開催が院内救急対応システム<Rapid Responce System:RSS>として盛り込まれることになりました。詳細は、コチラ(日本内科学会HP)です。
ただでさえ多忙の中、人員を割いてJMECCを開くのですから、病院として加算対象になるのは吉報ですよね。

ところが、従来のコースでは加算対象になりません
新たに「RSS対応」という補講が加えられたコースでなければ、加算対象にならないのです。
病院の収益に直結するお話ですから、今後、大きな病院で開催されるJMECCは、このRSS対応バージョンのコースになっていくでしょう。

そもそも、RSSって?
この聞きなれない用語ですが、簡単に言えば”急変の前兆段階での取り組み方”です。
つまり、RSSとは院内に急変対応チーム:Rapid responce team(RRT)を常設させておいて、医療スタッフ各人が急変の前触れを察知して、RRTに早期介入させる、という仕組みのことです。

RRTスタッフには必ずしも医師が含まれる必要はなく、急変しそうな患者の状態をNEWSスコアと呼ばれる簡便な重症度評価に照らし合わせながら、早い段階で何らかの介入を促していく、のだそうです。

もっと具体的に例えると、医師も看護師も、ベテランになってくると、「なんとなく急変しそうな嫌な予感」がわかってきますよね。
患者の息づかいであったり、血圧の変動であったり。
それをスコアリングでカタチとして見えるようにしながら、嫌な予感が的中する前に早めに対応をしていく、というのが要点のようです。

RSS対応バージョンが従来コースとどう違うか
→一言でいえば、従来の内容に、さらに45分間の「RSS講習・座学」が追加されたものです。
具体的なタイムスケジュールは、コチラ(日本内科学会HP)ですね。
「昼食後の映像視聴」と聞いて、みなさんの受講時の様子が目に浮かびます。

とはいいましても、RSS対応バージョンのJMECCを開催するには、RSS対応の補講済みインストラクターを配置しなければなりません。
インストラクターも、RSS対応の補講済みの人と、補講を受けていない人の2種類に分かれるということです。

ただでさえインストラクターが不足する中、RSS対応のインストラクターを特別に確保するのは開催側も頭を抱える内容でしょうから、少なくとも地方開催のコースは従来コースで開催されるのではないかと思われます。
(もっとも、RSS認定の補講とテストはそれほど難しくありません。筆者も補講を受けてみましたが、30分程度でRSS対応の認定をとることができました。)

まとめ

●JMECCは心肺停止に陥る前に行う系統的処置を学ぶものです。
●非常に実践的ですので、内科医であればぜひ受講して、迅速な救急対応を身につけましょう!
●JMECCは総合内科試験の直前に混みあう可能性があるため、早期の受講をお勧めします。