問1 熱中症の疫学について、誤っているものをえらべ。
a) 好発時間帯は12時から15時である。
b) 発症時期は梅雨明けの7月中旬から8月上旬とされる。
c) 女性に多い。
d) 高齢者では屋内での非労作性の発症例が多い。
e) 高温多湿な環境で発症しやすい。
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解答 c)統計上は男性に優位で、屋外での労作のエピソードが多い。約3割の熱中症は、2時間以上のスポーツで発症している。
なお、熱中症に関してはしばしば気温の上昇ばかりが報道されるが、湿度も重要な要素である。湿度が高いと、汗が蒸発しにくく、放熱が阻害されるからである。
問2 高齢者の熱中症のリスク因子として、適切ではないものをえらべ。
a) 子や孫と同居している。
b) 降圧薬の内服歴
c) 利尿薬の内服歴
d) 糖尿病の既往
e) 認知症の既往
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解答 a)独居の要介護者であることもリスクの一つである。エアコンの使用頻度が低い点が言及されている。
問3 日常生活で熱中症を発症しうる乾球温度(気温)はどれか。
a) 31℃
b) 28℃
c) 24℃
d) 20℃
e) 15℃
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解答 a)乾球温度31℃以上になると、“すべての生活活動で起こる危険性”とされており、運動は厳重注意である。一方、35℃以上では運動は原則中止となるが、このことはあまり知られていない。従ってスポーツ大会の運営にあたり、雨天以外に高気温なども延期や中止の対象とするべきと思われる。
なお、熱中症とそのリスクとなる気象条件を指標とした暑さ指数というものがある。この指数は、日本の各主要都市において、気温のみならず湿度、風、日射、輻射を組み合わせて算出したもので、環境省の熱中症予防情報サイトで公開されている。
※気温の上昇に順応していない時期には、より低い温度で熱中症を発症することがある。従って、冬場であっても熱中症死亡例は生じうる。
問4 熱中症のうち、最も重症のものはどれか。
a) 熱失神
b) 熱痙攣
c) 熱疲労
d) 熱射病
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解答 d)熱中症とは、“高温環境下に暴露されたことによる体調不良”全般を指し、いわば症候群である。熱中症を重症度で分類すると、a)→d)の順に重症となる。
問5 熱射病の古典的三徴ではないものを二つえらべ。
a) 口渇感
b) 意識障害
c) 体温40℃以上
d) 発汗停止
e) めまい
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解答 a)、e)古典的三徴はb)、c)、d)であるが、近年はこの三徴は重要視されていない。その理由は、三徴に固執するあまり、上記に挙げたa)、e)を軽視し、重症例の発見が遅れることが懸念されるからである。
問6 熱中症の症状として非典型的なものをえらべ。
a) 生あくび
b) 胸痛
c) 筋肉痛
d) せん妄
e) 頭痛
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解答 b)熱中症の症状は多彩であるが、胸痛を主訴とすることは稀である。
そのほか、痙攣、嘔吐も高頻度で認められる。
問7 熱中症診断について誤っているものをえらべ。
a) 熱中症Ⅰ度とは、現場での処置で対応可能な状態である。
b) 熱中症Ⅱ度とは、従来の熱疲労に相当し、医療機関への受診を要する。
c) 熱中症Ⅲ度で血液凝固異常を来たすことがある。
d) 血中CK値が高値でなければ、熱射病は否定できる。
e) 発汗の程度は短時間で変化するため、経時的な観察が必要である。
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解答 d)b) 文章の通りであるが、従来の熱疲労はⅠ~Ⅲ度の幅広い重症度を含みうるとされている点に注意を要する。
d) 熱中症の診断マーカーとして、CK値やプロカルシトニン値が検証されてきたが。そのエビデンスは十分ではない。
問8 以下のうち、熱中症への経口補水液を選ぶ上で最も重要な要素はどれか。
a) カリウム
b) ブドウ糖
c) マグネシウム
d) ナトリウム
e) クエン酸
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解答 d)上記のいずれも必要であるが、最も重要な要素はナトリウムである。
スポーツドリンクに不足がちなのはナトリウムであるため、ポカリスエットやアクエリアスよりもナトリウム含有量の多いOS-1が推奨される。そのほか、梅昆布茶や味噌汁も熱中症への水分補給に適している。
問9 経口補水液の自作レシピはどれか。
a) 1Lの水に0.5gの食塩と、小さじ1杯の砂糖を加える。
b) 1L の水に1~2gの食塩と、大さじ2~4 杯の砂糖を加える。
c) 1Lの水に1~2gの食塩と、大さじ8~10杯の砂糖を加える。
d) 1Lの水に6gの食塩と、大さじ2~4杯の砂糖を加える。
e) 1Lの水に6gの食塩と、大さじ8~10杯の砂糖を加える。
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解答 b)本邦において、経口補水液を自作するシーンはあまり無いと思われるが、患者へのアドバイスとして知っておいてもよい知識であると思われる。
問10 熱中症患者への冷却法について、正しいものをえらべ。
a) 血管内冷却カテーテル法が最も有効である。
b) 冷却は緩徐に行う。
c) 四肢に水を噴霧して、風で仰ぐ蒸散冷却が有効である。
d) アセトアミノフェンなどで薬物的な解熱を図る。
e) ゲルパッドでの体表冷却が有効である。
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解答 c)a) 血管内冷却カテーテル法は保険収載されたものの、エビデンスに乏しい。
b) 深部体温38℃以下になるように、冷却は早急に行う。
c) 氷などで冷却を試みると、末梢血管が収縮して放熱効率が悪くなると言われており、ぬるま湯を噴霧して熱を蒸散させる方法が良いとされている。
d) 熱中症は外的要因で熱がこもる機序であるため、内的な“発熱”ではない。解熱薬は、その機序から内的な発熱にのみ有効性を示すため、熱中症には無効である。
e) ゲルパッドでの冷却もエビデンスが乏しい。
問11 非労作性熱中症(古典的熱中症)として誤っているものをえらべ。
a) 屋内発症
b) 高齢者に多い
c) 予後不良である
d) 数時間で発症する
e) 基礎疾患を有していることが多い
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解答 d)屋内で熱波による熱中症をおこすパターンである。熱中症全体の半数が日常生活の範囲で発生している。
数日で徐々に進行することが特徴である。
問12 熱中症の後遺症として、考えにくいものをえらべ。
a) パーキンソン症状
b) 小脳失調
c) 慢性腎不全
d) 短期記憶障害
e) DIC
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解答 e)DICは急性期の合併症である。
処置が遅れた場合、DIC、横紋筋融解症による腎不全を来たしうる。