問1 胃食道逆流症(GERD)の疫学に関して、正しいものをえらべ。
a) 有病率は 30%前後である。
b) H.pylori除菌療法の普及により、GERD患者数は減少傾向である。
c) 非びらん性のGERDは肥満者に多い。
d) 食道狭窄を合併することがある。
e) 食道裂孔ヘルニアとの関連性は無い。
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解答 d)a) 有病率は10%前後である。
b) H.pyloriの除菌でGERD患者数は増加することが知られている。
c) やや細かいが、びまん性であれば肥満者に多いといえるが、非びらん性の場合はBMIとの関連性に乏しいとされる。
d) 文章の通り。
e) 食道裂孔ヘルニアがあれば、GERDは合併しやすい。
問2 非びらん性GERD (いわゆるNERD) と、びらん性GERDを比べ、非びらん性GERDに当てはまるものをえらべ。
a) ヘルニアの合併が多い。
b) 食道が酸に曝される時間が長時間である。
c) 二次蠕動波の誘発が高率である。
d) びらん性GERDよりも食道の感受性が低い。
e) 男性に多い。
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解答 b)非びらん性GERD (NERD) は、びらん性GERDと比べてヘルニアの合併が少なく、食道が酸に曝される時間が長い。二次蠕動波の誘発が低率で、食道の感受性も亢進しているため、びらん性GERDよりも鋭敏に症状が出現しやすい。また、海外では女性や低体重者に多いとの報告もある。以上から、非びらん性GERDとびらん性GERDとでは、病態が異なるのではないかとされている。
問3 胃食道逆流に関して、誤っている記述をえらべ。
a) 一過性食道下部括約筋(LES)弛緩は、健常人よりもびらん性GERD患者で高率に認められる。
b) 重症のGERD症例では、元々のLES圧が低く、一過性LES圧弛緩の時以外にも胃食道逆流が生じている。
c) 酸以外の胃食道逆流でもGERDは起こりうる。
d) H.pylori感染者ではGERD有病率が低い。
e) GERD症例の多くは、運動制限を必要としない。
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解答 a)一過性食道下部括約筋(LES)弛緩は健常人でも発生しており、その頻度はびらん性GERD患者と同等とされている。
GERDと運動の関連性に関しては、激しい労作が胃食道逆流を増加させることは知られているが、それがGERDに直結するかどうかは不明である。
問4 GERDによる非典型的な症状として考えにくいものを挙げよ。
a) 耳鳴り
b) 胸部絞扼感
c) 腰痛
d) 慢性咳嗽
e) 咽頭部痛
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解答 c)食道下端には迷走神経が通っており、GERDでは迷走神経刺激を介して様々な中枢反射が生じることで、多彩な症状が出現する。また、呼吸器系疾患の合併率が高いことも知られている。腰痛はあまり関係がない。
問5 GERDに関する記述のうち、正しいものをえらべ。
a) 自覚症状の程度と食道内視鏡所見は強く相関する。
b) 自覚症状の程度と食道pHモニタリングは強く相関する。
c) GERDへのPPIテストは、感度が低いが特異度が高い。
d) ワイヤレス式24時間食道pHモニタリングは、PPI抵抗性GERDへの治療戦略で有用である。
e) GERDの診断上、ヨード染色を行うことはない。
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解答 d)a) 自覚症状の程度と食道内視鏡所見は相関しない。ただし、食道内視鏡所見を客観的な重症度で分類したロサンゼルス分類は日常診療で重要であり、症状のみならず、治療への反応性や維持療法中の再発リスクとも関連しているとされている。
b) 自覚症状の程度と食道pHモニタリングの相関性の程度は低い。
c) GERDへのPPIテストは、感度78%、特異度54%である。
d) 本法の登場により、24時間の食道内pHが詳細に把握されるようになり、酸以外の要因でも胃食道逆流を生じることが明らかになった。
e) ヨード染色は食道癌の精査で用いられることが多いが、GERDでも使用することがある。
問6 LES圧を低下させ、かつGERDの症状を増悪させうるものとしてエビデンスに乏しいものを二つえらべ。
a) チョコレート
b) タバコ
c) 臥位
d) アルコール
e) 炭酸飲料
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解答 a)、e)上記のいずれもがLES圧を低下させるが、LES圧の低下と症状は必ずしも合致しない。症状まで増悪させるものとして明らかなものは、b)、c)、d)である。
問7 GERDの治療と合併症に関して、誤っているものをえらべ。
a) GERDは食道腺癌のリスク因子である。
b) 生活習慣の是正単独でもかなりの症例で症状の改善がみられる。
c) GERDへの第一選択薬はPPIである。
d) 非びらん性GERDにおいて、モサプリドはPPIとの上乗せ効果が認められている。
e) PPI抵抗性GERDにおいて、六君子湯はPPIとの上乗せ効果が認められている。
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解答 b)GERDの治療で「食べてすぐに横になるな」という指導はしばしば行われるが、こうした生活指導単独ではあまり効果が期待できず、PPI併用下での治療が望ましいとされる。
GERDに対するモサプリド、六君子湯の単独使用での治療効果は低いものの、PPIとの併用で相乗効果が認められる。特にPPIと六君子湯は、PPIの倍量投与に匹敵する。
問8 GERDの長期維持療法に関して、正しいものをえらべ。
a) 内視鏡的に重度のGERDの場合でも、症状が無ければPPIは減量できる。
b) びらん性GERDにおいて、H2 ブロッカーでの再発抑制効果はPPIと変わらない。
c) 軽度だとしても、びらん性GERDの場合は薬物療法を中断するべきではない。
d) PPIの連用により、ガストリン産生腫瘍の発生率が上がるため、できるだけPPIは減量中止した方がよい。
e) PPIの継続投与中に水様下痢を生じた場合、microscopic colitisを考える。
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解答 e)a) 内視鏡的に重度のGERDの場合、ほぼ確実に再発するため、積極的なPPIの継続投与が必要である。
b) GERDにおいて、H2ブロッカーでの再発抑制効果40-70%だが、PPIでは80-90%以上である。
c) 軽度のびらん性GERDの場合、症状が出たら必要に応じて内服を再開する方法をとってもよい。これをオンデマンド療法という。
d) PPIの連用でカルチノイド産生腫瘍や胃癌、大腸癌の発生率が上がることが懸念されたが、2018年時点においては、それらを示唆する有力な報告は得られていない。
e) microscopic colitisとは、粘膜固有層での炎症で生じる難治性下痢である。少数ながら報告があり、PPIの中止で改善する。
※このほか、クロピドグレルの効果減弱や胃ポリープの発生率上昇なども報告されている。
問9 上部消化管術後食道炎に関して、誤っているものをえらべ。
a) 幽門側胃切除術では十二指腸液の逆流が多い。
b) 噴門側胃切除術後の逆流防止のため、Toupet形成術が付加されることがある。
c) 胃全摘術において、Roux-en-Y法のRoux脚が短いほど食道炎が起こりにくい。
d) 幽門側胃切除術においても、Roux-en-Y法は食道逆流を抑える有効な方法である。
e) 十二指腸液の逆流を測るうえで、24時間食道ビリルビンモニタリングが有効である。
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解答 c)a) 幽門側胃切除術や胃全摘術では十二指腸液の食道逆流が多い。
b) Toupet(トゥーペ)形成術とは、Nissen形成術と同じように、食道に胃を巻きつけて逆流防止を施す手術である。Nisssen法は360°に渡って食道に胃を巻きつけるのに対し、Toupet法は2/3、すなわち270°ほど食道に胃を巻きつける方法である。Nissen法よりも締め付ける力は弱まるが、みぞおちのしこり感は改善される。
c) 胃全摘術において、Roux-en-Y法のRoux脚が長いほど食道炎が起こりにくい。
d) 文面通り
e) 文面通り
問10 GERDの食道外症状として典型的ではないものをえらべ。
a) 外耳炎
b) 慢性咳嗽
c) 気管支喘息
d) 歯牙酸食
e) 不眠症
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