2019-nCoV新型コロナウイルス(COVID-19)について<2020年2月11日時点まで>

【この記事は、2020年2月12日に修正しました。】
※当コンテンツでは、流行地域への配慮を考慮したWHOの意向を尊重して、あえて流行地域名には触れずに作成しています。

朝比奈先生
ニュースで見聞きしているとおり、新型のコロナウイルス肺炎・・・COVID19(コビッド19)に世界中が注目をしているわね。

吉永さん
はい。

池田くん
どこに行っても「マスクが売っていない」って騒ぎになっています。

池田くん
ネット通販でも、マスクがものすごい値上がりしているようですよ。


吉永さん
・・・マスクって、こんなに高いものでした?

池田くん

某オークションサイトだと・・・

朝比奈先生
堂々と「新型コロナウイルス肺炎予防」と書かれているのに驚いたわ。

吉永さん
わたし、N95マスクはニガテです。
ゴムひものキツさや口元への食い込みがひどくて散々。

池田くん
N95が好きな人もいないだろうけど・・・。

吉永さん
手術で使うサージカルマスクの供給の見通しが立たない病院もあるようです。

朝比奈先生
世界規模で展開している某赤い病院だと、マスクの生産を海外に依存していたから、今後のマスク供給に頭を抱えているそうね。

池田くん
そもそも、ホントにマスクって必要なんですか?

吉永さん
厚生労働省の提言だと、マスク装着が推奨されるのは、
咳をしている人
換気不良の場所
とされているみたいよ。

池田くん
主に飛沫感染とされているから、一般的なインフルエンザウイルス感染症の対策とあまり変わらないってことだね。

池田くん
コロナウイルスって、エンベロープとかいう脂質が取り巻いているみたいだから(・・・なので、”コロナ”)、アルコール消毒や石鹸での洗浄が有効みたいですし。

朝比奈先生
この年始~春先のシーズンというのは、日本ではインフルエンザウイルスの流行期~花粉の時期よね。
今のまま”マスク恐慌”が長引くと、もっと困る人が大勢出てくると思うわ。

吉永さん
そっか!
このままマスク不足が続くと、花粉症のシーズンにマスク無しで過ごさなきゃならなくなりますね。

池田くん
テレビやネットでキッチンペーパーでマスクを自作する方法(警視庁HP)なんかも紹介されているようですが・・・。

池田くん
なんというか、ホントに肺炎予防にマスクが要るのかどうか、一歩下がって考える必要があるんじゃないかなぁ・・・。

朝比奈先生
新型コロナウイルス肺炎(COVID19)については、まだまだ疫学も病態も未知の部分が多いから、マスクの是非についても含めてどうしても情報が流動的になるわ。

朝比奈先生
でも、2月時点で日本が世界で2番目のCOVID19流行地域だという事実を考えると、決して対岸の火と思ってはいけないわ。

朝比奈先生
そのうえで、いまチェックをしておきたいのが2020年1月30日付でランセットに掲載された『新型コロナウイルス肺炎99例の後ろ向き調査報告』よ。

朝比奈先生
2020年1月25日までのアウトカムを集計し、数日でランセットに掲載されているということは、編集部と著者、査読者で内々に申し合わせているとしか考えられないスピードよ。

朝比奈先生
もちろん、それを批判するわけではないの。
COVID19のパンデミックを防ぐために学術誌がどう協力をすればよいのか・・・それを考えると、現状をできるだけスピーディに世界中の医師たちに伝える必要がある・・。

吉永さん
ということは、この論文は、disscussion云々というよりも、もっとシンプルに「実態のみを早く伝える」というメッセージが込められているってことですか?

朝比奈先生
そのとおりよ、吉永さん。
この論文の考察部分は、結果がどうであれ先行執筆が可能な内容にすぎないから、肝心なのは後ろ向きに調べた統計結果の方ね。

朝比奈先生
正確にいえば、統計というより集計だけど。

池田くん
同感です。
いろんなデマが飛び交っていて、情報が混乱していますからね。

池田くん
こういう実態速報は助かります。

吉永さん
いやだわ、池田くん・・・。
さっきまでネットでアレコレ検索して変な情報を医局中に触れまわっていたじゃないの・・・。

朝比奈先生
ほかにも、つい先週の2月7日にJAMAでオンライン発表された『2019-nCoV新型コロナウイルス肺炎138例の後ろ向き調査』のように、これからもどんどん報告が集積されてくると思うわ。

朝比奈先生
ちなみに、”COVID19(コビッド19)”という名称は2月11日にWHOに名付けられたものだから、これらの論文にはCOVIDの名前は出てこないわ。

池田くん
この二つの報告をみると、背景や症状の詳細がわかりますね。

吉永さん
えーと、新型コロナウイルス肺炎99例の報告の方は・・・

・全99例のうち、49例(49%)が海鮮卸売市場を訪れていた。
・同市場で生き物が売買されていた。
・平均年齢は55.5歳。
・男性67例、女性32例。
・リアルタイムRT-PCRにより、全症例で2019-nCoVが検出された。
・50例(51%)は慢性疾患や喫煙歴などを有していた。
・症状は、発熱82例(83%)、咳嗽81例(82%)、息切れ31例(31%)、筋肉痛11例(11%)、錯乱9例(9%)、頭痛8例(8%)、咽頭痛5例(5%)、鼻漏4例(4%)、胸痛2例(2%)、下痢2例(2%)、悪心・嘔吐1例(1%)であった。
・画像検査では、74例(75%)に両側性肺炎、14例(14%)に多発性の斑状~スリガラス状陰影、1例(1%)に気胸が認められた。
・17例(17%)が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、そのうち11例(11%)が短期間で悪化し多臓器不全で死亡した。
・ウイルス性肺炎の死亡リスクを予測するMuLBSTAスコアが、重篤な2症例の転帰と合致。
※MuLBSTAスコアは、1)多小葉性浸潤、2)リンパ球減少、3)細菌の混合感染、4)喫煙歴、5)高血圧症、6)年齢・・・の6項目からなるスコアリングシステムのこと。

池田くん
そして、つい先日報告された138例の報告だと・・・、

・年齢中央値は56歳(22~92歳)。
・男性75例(54.3%)、女性63例(45.7%)
・発熱136例(98.6%)、倦怠感96例(69.6%)、咳嗽82例(59.4%)。
・リンパ球減少症(リンパ球数:0.8×109/L[四分位範囲:0.6~1.1])が97例(70.3%)、プロトロンビン時間延長(13.0秒[同:12.3~13.7])が80例(58%)、LDH上昇(261U/L [同:182~403])が55例(39.9%)で認められた。
・胸部CTでは、全例で両肺野の斑状~スリガラス状陰影が認められた。
・抗ウイルス薬治療(オセルタミビル)を124例(89.9%)が受け、抗菌薬治療を多数の患者が受けた(モキシフロキサシン:89例[64.4%]、セフトリアキソン:34例[24.6%]、アジスロマイシン:25例[18.1%])。また、ステロイド療法を62例(44.9%)が受けた。
・ARDS22例(61.1%)、不整脈16例(44.4%)、およびショック11例(30.6%)。
・最初の症状から呼吸困難までの時間の中央値は5.0日、入院までは7.0日、ARDSまでは8.0日だった。
・ICUで治療された重症例(36例)は、ICUで治療されなかった患者(102例)と比べて、年齢が高く(中央値:66歳 vs.51歳)、併存疾患を有する割合が高かった(26例[72.2%] vs.38例[37.3%])。主な併存疾患は高血圧(21例[58.3%] vs.22例[21.6%])、糖尿病(8例[22.2%] vs.6例[5.9%])、心血管疾患(9例[25.0%] vs.11例[10.8%])など。
・ICUの36例のうち、4例(11.1%)が高流量酸素療法、15例(41.7%)が非侵襲的換気療法、17例(47.2%)が侵襲的換気療法を受けた(うち4例はECMO:体外式膜型人工肺に切り替え)。
・2月3日時点で、47例(34.1%)が退院し、6例が死亡(全体の死亡率:4.3%)、残りの患者は入院中である。
・退院した患者47例において、入院期間の中央値は10日間であった(四分位範囲:7.0~14.0)。
・57例(41.3%)が院内で感染したと推定され、その中にはすでに他の理由で入院していた17例の患者(12.3%)と40例の医療従事者(29%)が含まれる。
・感染した患者のうち、7例は外科部門、5例は内科部門、5例は腫瘍科部門に入院していた。感染した医療従事者のうち、31例(77.5%)が一般病棟で、7例(17.5%)が救急部門で、2例(5%)がICUで勤務していた。

朝比奈先生
こうしてみると、2019-nCoV新型コロナウイルス肺炎(COVID19)というのは、どうも両側肺野の斑状~スリガラス状陰影が高率で認められるようね。

吉永さん
不安神経症の人が、特に症状も無いのに夜間に「レントゲンを撮れっ!」て駆け込んできそうで怖いです・・・。

池田くん
CT撮影なんかも同じだね。
放射線被曝のデメリットと天秤にかけて検査をするか決めるべきなんだけど、不安神経症の病気の人は、パフォーマンスとして撮影してみせないとなかなか納得してくれなかったりするよね・・・。

朝比奈先生
とくに、現時点のように2019-nCoV新型コロナウイルス肺炎(COVID19)が未解明なうちは世間に不安をあおられてしまうわ。

朝比奈先生
もしかしたら、エボラ出血熱のような致死率が高い感染症と混同している人も多いんじゃないかしら。

吉永さん
流行地域以外のところでは、致死率があまり高くないみたいですし・・・。

朝比奈先生
いまやれることは、通常のウイルス感染症対策を怠らず、現地から送られてくる報告を客観的にみて、その疫学的特徴を見出すこと
・・・それに尽きるでしょうね。

朝比奈先生
2月10日に東京都で”STOP感染症戦略会議”が国民向けに以下の7項目が提言されたわ。

正しく恐れる
ウイルスや菌の顔と性格を知る
新生活習慣をつくる
最新の対策技術にも目を向け情報収集する
喉元過ぎても熱さを忘れない
新型肺炎以外の感染症にも目を向ける
防災用品だけでなく、感染症対策用品も備蓄を

朝比奈先生
これから東京オリンピックも控えていて、海外からの感染症には十分に対策を立てないとならないのだけれど、それは国民全体の意識の改革に根差したものでなければ成り立たないわ。

朝比奈先生
そうした視点で今回の新型コロナウイルス肺炎騒動を見直してみると、医学的な対応よりも、むしろそれ以外の面で反省が求められるんじゃないかしら。

朝比奈先生
行政の対応のしかた、マスコミのヒートアップした報道・・・。

池田くん
それと、マスクの買い占め騒動。

朝比奈先生
令和になっても、大衆の本質はオイルショックの時代とそう変わらないのかもね。

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